マスコミや警察などが流布している虚偽の主張は次の通りである:
18歳又は16歳未満で大人の男性と性的関係を持った女性は深刻な心理的外傷に苦しみ、
その後の社会適応に深刻な悪影響を被る事になる。
16歳未満の子供は妊娠出産リスクが高く、産道や骨盤の発達が未熟で帝王切開分娩などを
しなければならなくなる。
10代で妊娠出産すると進学して高収入の仕事に就く事が妨げられるため、そうしなかった場合に
比べて経済的に貧しい生活を強いられる事になり、
生活保護受給者に陥るリスクが高くなり、社会保障費用の負担が大きくなる。
18歳未満の子供は人生経験や知識がないため、適切に子供を育てる事が出来ない。
大人と子供は圧倒的な力関係の格差があるため、有効な同意を行えない。
女性も進学して職業経歴を積んだ方が良い人生を送れる筈であるから、それを妨げる事は搾取で被害に違いない。
現在判明している科学的な事実:
■社会的、心理的適応
16歳未満で5歳以上年上の成人男性と初体験を迎えた女性はその後の心理的、社会的な適応に関する指標の大部分で、成人同士で初体験を迎えた群と同じぐらい良好でした。
Rind B. First Sexual Intercourse in the Irish Study of Sexual Health and Relationships:
Current Functioning in Relation to Age at Time of Experience and Partner Age.
Arch Sex Behav. 2021 Jan.
思春期前(この研究では0歳から14歳)の子どもに関しても同様の結果が報告されています。
Kilpatrick, A. C. (1986). Some correlates of women’s childhood sexual experiences:
A retrospective study. The Journal of Sex Research.
■妊娠出産リスク
16歳未満の子供の妊娠出産リスクを調査したある研究では、16歳未満の子供の産科リスクは大人と殆ど変わらず、帝王切開分娩が必要になる割合や自然分娩で裂傷を負う割合は有意に低かった事、分娩時間の長さは成人と同様であった事が報告されている。
Perry RL, Mannino B, Hediger ML, Scholl TO. Pregnancy in early adolescence:
are there obstetric risks? J Matern Fetal Med. 1996 Nov-Dec.
同様に、人口統計学的要因や潜在的な交絡因子を制御して16歳未満の妊婦と成人対照群の周産期合併症リスクを比較した研究においても、殆どの周産期合併症リスクについて16歳未満の妊婦と成人対照群の間に有意な差が存在しなかったことが報告されている。
Berenson AB, Wiemann CM, McCombs SL. Adverse perinatal outcomes in young adolescents. J Reprod Med. 1997 Sep;42(9):559-64. PMID: 9336751.
異なる年齢で妊娠出産した姉妹の新生児転帰を比較する事で未特定の交絡因子を厳格に制御した研究では、交絡因子を制御すると、早産及び在胎不当過小児等の新生児リスクは著しく減少し、18歳未満の早産リスクは、20代前半よりわずかに高いが、20代後半と同じややや低い程度であり、30歳以降に比べればずっと低い事、在胎不当過小児に関しては、18歳未満が最もリスクが低くなる事が判明しています。
Lawlor DA, Mortensen L, Andersen AM. Mechanisms underlying the associations of
maternal age with adverse perinatal outcomes: a sibling study of 264 695 Danish women
and their firstborn offspring. Int J Epidemiol. 2011 Oct.
■10代の出産がその後の人生に及ぼす影響
10代で妊娠した女性の中には、流産等により出産に至らなかった女性が居る事を利用して交絡因子を
制御した研究では、18歳未満で妊娠出産する事が女性のその後の人生に及ぼす負の影響は
以前に考えられていたよりも遥かに小さく、大部分の悪影響は短期的な物に過ぎなかった事、
それどころか、10代の母親は妊娠したが流産等して出産に至らなかった群に比べて後年の労働時間と
所得が高くなる傾向がある事が示されています
これは元々働く事の出来ない10代のうちに妊娠出産と子育てをある程度済ませてしまう事で、
20代以降により多くの時間を労働に割り当てられる事や、10代で妊娠出産する子供は元々高等教育を
必要とする様な専門的な職業への適性や関心が低い層である事が多く、10代で妊娠出産しなくとも
そのような職業に就く可能性が低い事が理由ではないかとされています。
その結果として、10代の母親は、出産直後から数年間の間、生活保護等の受給率がやや高くなるものの、22歳以降になると、生活保護の受給率や受給額は逆転し、10代の母親の長期的な生活保護の受給率や受給額は20代以降に出産を遅らせた女性の群に比べてむしろ低くなる事が示されています。
V. Joseph Hotz, Susan Williams McElroy and Seth G. Sanders,Teenage Childbearing and
Its Life Cycle Consequences: Exploiting a Natural Experiment,
Journal of Human Resources, July 2005.
■10代の母親の子孫の健康
同様に流産を利用して交絡因子を制御する戦略を利用した研究は、母親が18歳未満である事は
子供の健康に負の影響を及ぼしておらず、それどころか、18歳未満の母親の子供は成人女性の子供より
診断された障害や医療的注意を要する状態が少なかった事を示しています。
この研究は18歳未満の母親の新生児リスクについても調査していますが、前述の研究と同様に、
交絡因子を十分に制御すると、18歳未満の母親の新生児リスクは有意ではなくなってしまった事を報告しています。
Shubhashrita Basu, Devon Gorry,Consequences of teenage childbearing on child health,
Economics & Human Biology,Volume 42,2021.
さらに、同様に流産した女性を利用する現時点で最も強力な交絡因子の制御方法を利用し、10代の母親(平均年齢16歳)から生まれた子供の教育達成度、労働市場での成果等を調査した研究では、交絡因子を制御すると、10代の母親から生まれる事は子供の教育達成度や労働市場での成果に有意な悪影響を与えていなかった事が判明しています。Devon Gorry, 2023. “Consequences of Teenage Childbearing on Child Outcomes in the United States,” Journal of Policy Analysis and Management, John Wiley & Sons, Ltd., vol. 42(1), pages 225-254, January.
■力関係と行為の自発性
16歳未満で5歳以上年上の男性と性的関係を持った女性の主観的認識を調査した研究では、16歳未満で5歳以上年上の男性と性的関係を持った女性の75%はその関係を自発的なものであったと回答している。
Manlove, J., Terry-Humen, E., & Ikramullah, E.,Young teenagers and older sexual partners:
Correlates and consequences for males and females.
Perspectives on Sexual and Reproductive Health,2006.
18歳未満の時に5歳以上年上の成人男性と初体験を迎えた女性と、同年代同士で初体験を迎えた女性の
最初の性交に関する感情的な評価を調査した研究では、18歳未満の時に5歳以上年上の成人男性と
初体験を迎えた女性は、同年代同士で初体験を迎えた女性と同じぐらいその関係を楽しんでいた事を
報告しています。
この結果は14歳以下の時に成人男性と初体験を迎えた女性に限定した場合でも同様でした。
Rind B, Welter M. Enjoyment and emotionally negative reactions in minor–adult versus
minor–peer and adult–adult first postpubescent coitus: A secondary analysis of
the Kinsey data. Arch Sex Behav. 2014.
さらに、16歳以下で教師等の指導的な立場にある男性と性的関係を持った女性に詳細なインタビュー調査を行った研究では、16歳以下の時に指導的な立場にある成人男性と性的関係を持った女性は全てその関係を自発的なものであったと認識しており、ロマンチックな経験談として肯定的な評価を抱いている女性もいる事が示されています。
…16歳の時に28歳の音楽教師と3年間の性的関係を持った女性は次の様に語っている:
『彼は本当にとてもカリスマ的な先生で、とても愛され、尊敬されていました。本当に、陳腐なように聞こえますが、本当にそうだったのです…そして、突然、彼が私と同じ目線で見つめてくれるという経験は…とても、とても…とても感動的な経験でした。私は本当に、本当に彼を愛し、尊敬していました…突然私は生徒ではなく、何か別のものになるのです…』
Lassri, D., Wasser, O. & Tener, D. Lover, Mentor, or Exploiter: Retrospective Perspectives of the Older Person Following Sexual Relationships with Adults During Adolescence. Arch Sex Behav 51, 987–999 (2022).
■意思決定能力
医療的決定に関する子どもの意思決定能力を調査した研究では、14歳以上の子供の意思決定能力は
大人と変わらないと結論しています。
Weithorn LA, Campbell SB. The competency of children and adolescents to make informed treatment decisions. Child Dev. 1982 Dec.
別の研究でも、思春期の子供(この研究では13歳以上)の合理性や不合理な傾向、脳の構造、
神経的機能等は大人と変わらないと結論しています。
Moshman D. Adolescent rationality. Adv Child Dev Behav. 2013.
また少し前まで、基本的な認知能力は大人と同等であるが、自己制御に関連する能力の発達が
未熟であり、感情的に熱くなってしまう様な状況では大人に比べて不合理な選択を行ってしまう
傾向があるとする10代の脳仮説が存在したが、最近の実証的研究においては、ごく少数の思春期の男性
(おそらくADHD)にしか当てはまらない事が示されています。
Murray, A.L., Zhu, X., Mirman, J.H. et al. An Evaluation of Dual Systems Theories of
Adolescent Delinquency in a Normative Longitudinal Cohort Study of Youth.
J Youth Adolescence 50, 1293–1307. 2021.
Khurana A, Romer D, Betancourt LM, Hurt H. Modeling Trajectories of
Sensation Seeking and Impulsivity Dimensions from Early to Late Adolescence:
Universal Trends or Distinct Sub-groups? J Youth Adolesc. 2018.
■性的知識
1970年代のキンゼイ研究所の性的知識の獲得時期に関する調査では、1970年代のサンプルでは、
過半数の女性が性交、妊娠、受精、月経、中絶、売春について12歳までに学び、性病とコンドームについても14歳までに学んでいる事が示されています。
Gebhard, P. H. (1977). The acquisition of basic sex information. The Journal of Sex Research.
■進学及び社会進出と女性の幸福
18歳未満での女性の児童婚が一般的に行われているタンザニアの横断的な調査データ(本研究の女性
サンプルの約35%が18歳未満で結婚)を用いて、夫が年上の配偶者の年齢差が女性にとって不利益になるのかどうかを調査した研究では、潜在的な交絡因子を制御した場合、配偶者の年齢差は出生率や離婚のリスクと関連しておらず、女性の精神的な健康や家庭内における意思決定の自律性は、同年代同士または妻が年上の結婚という稀な事例に比べて、夫が年上の結婚の方が高い事、更に、配偶者の年齢差の大きさは、夫が年上の結婚の圧倒的多数において、女性の幸福度に関するいずれの指標とも関連していなかった事を報告しています。
David W. Lawson, Susan B. Schaffnit, Anushé Hassan, Mark Urassa,
Shared interests or sexual conflict? Spousal age gap, women’s wellbeing and fertility
in rural Tanzania,Evolution and Human Behavior,Volume 42, Issue 2,2021.
18歳未満の児童婚が最も多い国の一つとされるナイジェリアにおいて、夫婦の年齢差と家庭内暴力の関係を調査した研究では、男性が年上で年齢差が大きいほど、家庭内暴力は減少する事、夫との年齢差が5歳未満(同年代同士)の女性は全ての婚姻期間のカテゴリにおいて、家庭内暴力を経験するリスクが最も高かった事が報告されています。
Adebowale AS. Spousal age difference and associated predictors of intimate partner
violence in Nigeria. BMC Public Health. 2018 Feb 2.
夫婦の経済的地位と家庭内暴力の因果関係を調査したある研究は、妻の経済的地位が夫の経済的地位と
同等以上である場合、家庭内暴力が大幅に増加する事を発見し、女性のエンパワーメントとジェンダー平等を促進する政策は、かえって女性の家庭内暴力被害を増加させる恐れがある、と結論しています。
Roychowdhury, Punarjit and Dhamija, Gaurav, Don’t Cross the Line: Bounding the Causal Effect
of Hypergamy Violation on Domestic Violence in India (November 6, 2020).
既婚女性の有給労働参加と、親密なパートナーからの暴力の関係を調査した別の研究は、有給労働に従事している女性は、専業主婦の女性に比べて有意に高いレベルの家庭内暴力に直面していたこと、女性が有給の仕事を行う事で得られる自律性が家庭内暴力を減少させるという証拠は何処にも見当たらなかった事を報告しています。
Dhanaraj, S., & Mahambare, V., Male Backlash and Female Guilt: Women’s Employment
and Intimate Partner Violence in Urban India.
Feminist Economics, 28(1), 170–198.(2021).
フィンランドにおいて配偶者の社会経済的地位が離婚リスクに及ぼす影響を調査した研究では、夫が高収入の場合は離婚のリスクが低下し、妻が高収入の場合は、夫の収入がどのような水準にあっても離婚のリスクが増加し、とりわけ、妻の収入が夫の収入を上回っている場合に離婚リスクが急激に増加する事が報告されています。
Jalovaara, M. The joint effects of marriage partners’ socioeconomic positions
on the risk of divorce. Demography 40, 67–81 (2003).
エクアドルにおいて女性のエンパワーメントとフェミニサイド(女性憎悪殺人)に関する法令の施行が自治体間で均一ではなかった事を利用し、これらの政策が女性に対する致死的な暴力に与える影響を調査した研究では、新しく女性憎悪殺人を厳罰化する法令を施行した自治体や女性のエンパワーメントが進んでいる自治体において、女性憎悪殺人の発生率が急激に増加していた事を発見している。
Moscoso, Bernard, Femicides: Laws, Women Empowerment, and Retaliation Effects (November 9, 2021).
■歴史的証拠
歴史的に見ても、思春期以降の子供は殆ど普遍的に大人の性欲の対象として扱われており、子供という概念には性欲の対象とすべきではない等と言う意味合いは全く含まれていません。
例えば、Robert Garland(2012)によれば、古代エジプトでは女性は12歳前後で20歳前後の男性と交際し、結婚していたとされますし、David Sacks(2005)によれば、古代ギリシアでは、女性は14歳前後で20歳以上年上の男性と結婚していたとされています。
Güner Coşkunsu(2015)によれば、古代ローマにおいては、女性の婚姻適齢は12歳と定められていましたが、一般には15歳前後で25歳前後の男性と結婚していたとされます。
また古代インドのマヌ法典においては、女性は12歳前後で30歳前後の男性と結婚すべしと定められていますし、古代イスラエルで成立したユダヤ教の聖典タルムードには、女性は12歳で婚姻適齢とする事が定められています。
またイスラム教のハーディスによれば、ムハンマド最愛の妻とされるアーイシャは6歳の時に50歳前後のムハンマドに嫁ぎ、9歳のとき性交渉を行い、婚姻を完成させたとされ、それ以降、この9歳という年齢が古典的なイスラム法における女性の婚姻及び性的同意年齢の基準とされています。
我が国においても、8世紀頃に制定された養老律令において、女子は13歳で婚姻適齢とする事が定められており、その後も概ね13歳以上で性的な交際関係に従事する事が認められていました。
Milton Diamond(1990)によれば18世紀にオセアニア地域を探検した海洋探検家のジェームズ・クック船長は、タヒチを訪れた際に11~12歳前後の少女と成人男性が大勢の住民達の前で公然と性行為に従事しているのを目撃しているが、それは少しも不適切であるとか猥褻である等とは考えられていなかったと伝えています。
Karen L. Kramer(2008)によれば南米の先住民族であるヤルロ族の女性は初潮を迎えると同時に
結婚に適した年齢と見なされ、平均15歳で第一子を出産しているとされますし、Daniel L. Everett(2008)によれば、同じく南米の先住民族であるピダハン族でも大人と子供の性的関係は少しも禁じられていないとされています。
またRobert Lawlor(1991)によれば、アボリジニの女性は思春期を迎えると同時に20代から40代の
男性と結婚していたという事です。
結論:
このように16歳或いは18歳未満で成人男性と性的関係を持った女性の大部分はその関係を自発的なものであったと認識しており、その後の人生の全ての段階で何の悪影響も被っていなかった事が示されているため、児童ポルノや大人と子供の性的関係による「被害」や「悪影響」を訴えている女性は、『フェミニズムの教義に基づく性的関係に関する偏った否定的な見方に感化され、自分自身が深刻な被害を受けたか受けていると信じ込む事で、被害妄想による心因性のヒステリ―を引き起こしているだけ』に過ぎない可能性が高い。大人或いは成人は責任を取る能力があるが、子供或いは未成年は責任を取る能力がないという児童ポルノ禁止法や青少年条例等の擁護者がしばしば持ち出す主張は誤った二分法に過ぎない。厳密な科学的事実に頼るまでもなく、多くの大人は殺人など決して損害を完全に補償する事が出来ない様な方法で他人の権利を侵害しており、また債務を履行出来ず自己破産し、生活保護等の公的援助に頼っている。もしこのような大人が責任を取れているというのであれば、多くの子供は相手の成人男性や少なくとも一時的に公的援助に頼る事で責任を取る事が出来るだろう。
■自然法、自然的正義
法律は法律であるがゆえに有効であり、一般的な場合においてそれが支配的な権力を持つならば、それは法律である。
この法律およびその有効性に対する見解(これを法実証主義的理論と呼ぶ)は、どれほど極端であろうとも、恣意的、残酷、または犯罪的な法律に対して、法学者も国民も等しく無防備にしてしまったのである。
結局のところ、法実証主義的理論は法律を権力と同一視する。権力のあるところにのみ、法律が存在するのだ。
…
法とは正義への意志である。正義とは、人物に関係なく判断し、すべての人を同じ基準で測ることを意味する。
…
もし法律が、例えば人権を恣意的に与えたり奪ったりすることで、故意に正義への意志を裏切るのであれば、これらの法律には有効性が欠けており、人々はそれに従う義務を負わず、法学者もまたそれらに法的な性格を否定する勇気を持たなければならない。
もちろん、公共の利益は正義とともに法の目的であるというのは真実である。そしてもちろん、たとえ悪法であっても、法律そのものには価値がある。
それは、すなわち、法を不確実性から守るという価値である。そしてもちろん、人間の不完全さのために、法の三つの価値—公共の利益、法的確実性、正義—が常に法律の中で調和的に統合されているわけではなく、その場合に取るべき手段は、法的確実性のために悪く有害で不正な法律にさえ有効性を認めるべきか、それともその不正や社会的有害性のために有効性を否定すべきかを慎重に判断することである。
しかし、一つのことが国民も法学者も心に深く刻まれなければならない。
それは、あまりにも不正で、あまりにも社会的に有害な法律が存在し、その有効性、いや法的性格そのものを否定しなければならない場合があるということである。
したがって、いかなる法的制定よりも重い法の原則が存在し、それらと矛盾する法律は有効性を欠くことになる。
これらの原則は自然法または理性の法則として知られている。
Gustav Radbruch,Five Minutes of Legal Philosophy(1945)
実際、「法律は法律だ」という原則を持つ法実証主義は、ドイツの法律専門家を恣意的で犯罪的な制定法に対して無防備にしてしまったのである。さらに、法実証主義は、それ自体として制定法の有効性を全く立証することができない。それは、制定法がその背後にそれを実行するための十分な権力を持っていることを示すだけで、その有効性が証明されていると主張する。しかし、権力は確かに強制の「しなければならない」の理由となり得るが、それは義務の「べきである」や法的有効性の根拠とはならない。義務や法的有効性は、むしろその制定法に内在する価値に基づかなければならない。
確かに、ある価値はその内容とは関係なく、すべての実定法に付随する。すなわち、全ての制定法は少なくとも法的確実性をもたらすので、全く制定法が存在しないよりも常にましである。
しかし、法的確実性は法が実現しなければならない唯一の価値ではなく、また決定的な価値でもない。
法的確実性と並んで、目的性と正義というその他の二つの価値が存在する。これらの価値を順位付けする際、私たちは公共の利益に資するという法の目的性を最後に位置づける。決して「人民の利益になるものは何でも法である」という訳ではない。むしろ、長期的に見て、人民の利益となるものは、法が本来そうあるべきものであり、すなわち法的確実性を生み出し、正義を追求するものである。
法的確実性(これは、その法が制定されたという事実だけで、あらゆる実定法の特徴となる)は、他の二つの価値、すなわち目的性と正義の間の微妙な中間の位置に置かれるが、それは公共の利益のためだけでなく、正義のためにも必要とされるからである。
法律が一定で確実であること、すなわち、ここで今ある方法で解釈・適用され、別の場所や明日には別の方法で解釈・適用されないことも正義の要件である。法的確実性と正義との間、すなわち異議はあるが正式に制定された制定法と、制定法の形式をとっていない正しい法の間に対立が生じる場合、実際には正義とそれ自身の対立、すなわち見せかけの正義と真の正義との間の対立が存在するのである。この対立は福音書の中で、「あなたを指導する人々の言うことを聞き、服従しなさい」という命令と、他方で「人間に従うよりは神に従うべきである」という訓示の中に完全に表現されている。
正義と法的確実性の間の対立は、このように解決されるかもしれない。立法と権力によって確保された実定法は、その内容が不当であり人々の利益にならない場合でも基本的には優先される。
ただし、制定法と正義の間の対立が耐え難い程度に達し、「欠陥のある法律」としての制定法が
正義に道を譲らなければならない場合は別である。
制定的な無法と、欠陥はあるものの有効な制定法の間に、より正確な線を引くことは不可能である。
しかし、一つの区別の線は極めて明瞭に引くことができる。
すなわち、正義の試みさえ存在せず、正義の核心である平等が実定法の発行において意図的に裏切られている場合、その制定法は単に「欠陥のある法律」ではなく、法の性質そのものを完全に欠いている。なぜなら、実定法を含めた法は正義に奉仕することをその意義とするシステムや制度としてしか定義することはできないからである。この基準で測ると、国家社会主義の法律の全体的な部分は、決して有効な法の威厳に達することはなかった。
…特にあの12年間の出来事を踏まえて、正式に制定されてはいるが法の本質を欠いた法令、すなわち「制定法による無法状態」が法的確実性にとっていかに恐るべき危険をもたらし得るかを、私たちは認識し損なってはならない。そのような無法状態が、ドイツ民族の孤立した逸脱、二度と繰り返されることのない狂気としてとどまることを、我々は望まなければならない。しかし、我々はあらゆる事態に備えなければならない。国家社会主義の立法の濫用に対するあらゆる防御を無力化した法実証主義を根本的に克服することによって、ヒトラーのような無法国家の再現に対して、我々は自らを武装しなければならない。
Gustav Radbruch,Statutory Lawlessness and Supra-Statutory Law(1946)